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特許について、できるだけ分かりやすく説明しています!スクロールして頂くと過去の内容を閲覧できます。ぜひ読んでみてください!!

Page 28 知財管理

 3月になって暖かい日も増えてきましたが、まだ寒いです。そんななか、2023年4月から、企業知的財産部を舞台にしたドラマ『それってパクリじゃないですか?』が放送されるそうです。知的財産を取り扱う現場がドラマの題材になるなんて珍しいですね。「下町ロケット」以来でしょうか。
 企業の知的財産部は、その企業が取得した特許や登録商標等の管理及び活用を行います。勿論、特許を取得するために特許出願の作成等も行います。大きな企業の場合、多くの知的財産権が取得され、権利取得のための書類作成を毎日行いますので、知財部は「部」として大人数で構成されます。特許出願書類の作成には長時間を要しますし、審査段階での審査官との対応、権利取得後の年金管理など、皆さんが想像しておられるよりも、業務は広範囲に及びます。
 大規模な企業の場合は、上記のように知財部があり、知財に関する業務に従事する社員の方々がおられるので、知財の管理を安全に行うことができます。しかしながら、中堅規模の企業では、知財に関する業務に従事する知財部を置かず、社員の方々は本来の業務と兼任して、知財の業務を行うことが多いです。特許庁とのやり取りには期限があり、年金も期日までに支払わないと権利が消滅しますので、業務はなかなかに大変です。
 このように知財の業務にさほど時間を取ることができない企業、或いは、個人事業の場合でも、知的財産権は重要です。他人によるパクリで自社の製品が売れなくなる等の事態は避けたいところです。このような場合に、特許事務所を活用することがその助けとなります。特許出願書類の作成、審査段階での審査官との対応、権利取得後の年金管理などは、特許事務所に依頼すれば全て管理をしてくれます。上記の知的財産部を特許事務所にアウトソーシングする、といったイメージです。税務会計処理を税理士事務所に全てお任せするのと同様の感覚です。特許や商標の取得が必要になりましたら、その時点で特許事務所に相談して知財業務を担当してもらうと、企業様の本来の業務に集中して頂ける状況になります。特許庁とのやり取りは、かなり専門的なので、御自身でされるよりも特許事務所に任せた方が大幅に時間の節約になります。ぜひ御検討ください。
 ドラマや音楽により知的財産がますます取り上げられて皆さんの理解が深まり、知的財産を皆さんが身近に活用できる世の中になればと思っています。多額の開発費をかけて生み出した新製品が他人に簡単に真似されて売れなくなるという状況を、ぜひとも避けて頂きたいです。

Page 27 エジソン

 現在、2023年1月末ですが恐ろしく寒いです。幸い大阪市内では雪による問題は生じていないようです。こんなに寒い中、「エジソン」という歌が流行っています。「水曜日のカンパネラ」という音楽ユニットの曲のようです。「エジソン」という曲名だけに歌詞の中には「発明」という言葉が何度も登場します。そして「蓄音機」までも。
 エジソンといえば、蓄音機や白熱電球を生み出したことで有名な発明王です。このため、「発明」といえば、このような革新的な装置や部品のことを指すと思われがちです。しかしながら、特許法で保護対象としている発明とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」(第2条第1項)であればよい、とされています。このため、ありふれた生活用品についてのちょっとした工夫であっても十分に発明としてみなされます。またビジネスの世界では、従来品を改良した有益な新技術について特許が取得され、他者による製造販売を特許権で牽制することがよく行われています。「発明」についての「特許」はビジネスにおいて、自身の事業を守るために身近に用いられています。
 製造業においては、新製品の開発時に従来技術の改良は次々に行われるので、この改良を発明という創作物として大事に守ることが、他者との競争を有利に進めることに繋がります。皆さんにも、特許制度を有益に活用して頂ければと思っています。「発明」はエジソンだけのものではありません。「特許」は、ごく身近に頻繁に用いられているビジネスツールです。
 「エジソン」や「発明」が最近の歌の歌詞として取り入れられ、またその歌が多くの方々に受け入れられているというのは驚きました。こんな言葉を歌詞に取り入れながらも曲調は非常に軽く聴きやすく作られています。作者の才能に感服します。なお、「カンパネラ」といえば「銀河鉄道の夜」と思っていましたが、あちらは「カンパネルラ」でした。

Page 26 早期審査制度の勧め

 新年を迎えました!今年もどうぞよろしくお願い致します。原稿を作成している現時点では、まだ年の瀬なので実感が沸きませんが。。。日本では、年末29日又は30日あたりから新年4日くらいまで、年末年始の休暇に入りますが、これは、日本だけの習慣のようです。深くは知りませんが(笑)。他国では、12月31日まで普通に働きますし、1月は2日から働いています。近くの韓国、台湾、中国でさえ、そのようです(たぶん)。その上、外国との業務では、相手側のクリスマス休暇や春節に合わせる必要があり、日本独自には黄金週間やお盆休みもあるので、調整がなかなかに大変です。更に、各国祝日や個人休暇(欧米の人は非常に長期間!)もあるので、急ぎの業務のときはその確認ばかりしています。
 さて、ここでやっと特許出願のお話です。日本で特許出願をしてから実際に特許が特許庁に登録されるまでには、6ヶ月~5年くらいが必要になります。なぜこのように期間の幅があるかというと、日本の場合、特許出願という手続に加えて審査請求という別の手続があるからです。特許出願をしただけでは、特許を認めるかの審査が始まらないので、出願日から3年までに審査請求手続をします。3年の期間があるのは、この期間を使って、本当に特許取得作業を進めるべきか否かを再検討してもらうためです。
 では、特許出願と同時に審査請求手続をした場合は、どの程度の期間で特許を取得できるのでしょうか。私の実感としては1~2年です。上記と比べると短期間ですが、役所に何かの手続をしてその結果が得られるまでの期間として考えると、皆さんはまだ長いと感じられるかもしれません。ここで、特許庁は、早期審査制度を設けています。この早期審査制度を使えば、実感として、特許取得までの期間は出願から6ヶ月~1年くらいに短縮されます。これは利用すべきです!早期審査制度で審査をしてもらうためには、別途書類提出が必要ですが、弊所では、クライアント様が希望される場合には、特に費用を頂かずに早期審査手続をしております。このため、弊所では、特許出願から約6ヶ月で、特許庁から審査結果が届くことが多くなっています。
 なお、意匠登録出願や商標登録出願の場合は、審査請求制度はなく、出願をすれば審査が開始され、早期審査制度を利用しなくても、出願から6月~1年くらいで権利取得が可能です。
 最近はお正月でも普通にお店か開いていますね。昔のようなお正月の習慣は、もう既になくなったように感じています。おせち料理を作らないし、お雑煮も食べない人が増えているみたいですし、凧揚げをしている人も見かけません。年末年始の過ごし方が諸外国に近付いているのでしょうか(笑)。そういえば、クリスマスにチキンを食べるのは日本だけの習慣らしいですね!

Page 25 手続のオンライン化

 今日では、様々な手続がオンライン化されています。マイナンバーカードがあればコンビニで住民票が入手できますし、銀行もウェブやアプリで残高確認や振込ができます。税金も電子マネーで支払えます。銀行に行く用事が減ったので銀行は支店や窓口をどんどん減らしていますね。そして、役所に対する手続もウェブでできることが多くなってきました。確定申告もeTaxで大丈夫ですよね(笑)。
 特許出願等に必要な特許庁への手続もオンラインで行います。もちろん、紙媒体の手渡しでも可能なのですが、紙の場合は手数料が加算されて全く歓迎されていないです。
 特許出願で大事なのは、特許取得については先願主義というものが採用されている点です。これは、同一の発明に特許出願が競合した場合は、最先に出願をした者だけに特許を付与する、という制度です。複数の別人に対して同一特許の付与を認めることはありません。そして、先か後かは日付に基づいて判断します。つまり、時間差での判断はせず、同じ日に複数の特許出願があったときは、後先の優劣を付けません。両者に話し合ってもらって、どちらか1人だけに残ってもらいます。なので、特許出願は、早くしておいた方がいい、というか、早くしておかなければならないです。
 昔は、特許出願は、特許庁の職員に手渡す、又は郵送するのが一般的でした。手渡しの場合は、渡した日が出願日となり、郵送の場合は、発送日(特許庁に届いた日ではなく)が出願日となります。特許庁は東京にありますが、郵送の場合は発送日とすることで、特許庁に近い遠いで発生する不公平をなくしています。
 現在は、特許事務所等からオンラインで特許庁に特許出願を提出するのが一般的です(というかほぼ全部)。なので、出願日は、特許庁に書類を送るためにPCのボタンを押した時です(実際は処理時間分の数秒だけズレますが)。郵便局に出向く必要なく、郵送の準備をすることなく、一瞬で終わります。昔は、日付が変わる直前に大阪中央郵便局に走って行っていましたが、あれは何だったのか。。。
 そんなわけで、今は特許庁への手続は特許出願を含む各種の手続がオンラインで即座にできますので、特許出願、特許料の支払い、登録謄本(特許等の)取り寄せ等、特許事務所に頼めば、直ぐにしてくれるので、急ぎの場合でも気軽にお願いして頂ければと思います。
 普段はサッカーを全く観ませんが、なぜかワールドカップは観てしまいます。三浦カズ選手がワールドカップ予選に挑んでいたときは選手全員を覚えていたのですが、今は誰も分かりません。4年に1回突然観るだけなので(笑)。2022年ワールドカップでは、日本選手全員が欧州の一流クラブでプレーしているらしいので、ドイツ相手にビビるとか、そんなのは全くなかったのかもしれませんね。頼もしい!

Page 24 美味しい果物

 唐突ですが、果物は美味しいですね。スイカ、メロン、いちご、ブドウ、桃、みかんなど、どれも美味しいです。外国で食べる果物も美味しいです。マンゴー、マンゴスチン、ドラゴンフルーツ、ロンガンなどなど。ただ、外国で食べた果物の味が、あれっ?と思ってしまう場合もあります。例えば、南国でスイカを食べたとき。甘くなかったりします。イチゴは小さくて酸っぱい。メロンかキュウリか分からない(笑)。
 南国特有の果物を現地で食べるととても美味しいのですが、日本で食べている果物を外国で食べても甘くないことがあります。これは、日本の農業の技術が優れていて、品種改良や育成方法の確立により、美味しい果物が提供されているためです。私達は、他国よりも美味しい果物をごく普通に食べることができています。品質が他国製品よりも優れている日本の電気機器も多いですが、果物も優れています。日本は四季があり年間の温度変化が大きいにも拘わらず、すごいです。
 このように品種改良により新たな品種を開発した場合は、農林水産省に品種登録をすることで、他人により勝手に同一の品種が育成されるのを防止することができます。品種登録により「育成権」が発生して、これにより新たな品種が保護される、ということなんです。つまり、新たな品種を知的財産として保護する点で、特許権や商標権にも似ています。新たな品種の開発には費用が掛かりますので、開発者さんには、品種登録により保護をぜひ受けてもらいたいです。
 ただ、この品種登録も国毎にしなければ、その国では育成権が発生しないので、日本で登録していても、他国で登録していなければ、その他国では他者が自由に育成できてしまいます。なので、他国で登録しなかったシャインマスカット等が現地で栽培販売されている事態が生じています。栽培方法が違うので美味しくないとか、違うとか、色々と言われていますが。
 このように、国内外で品種登録により新品種を保護することは、投資の回収や市場確保から非常に重要視されています。新規技術や商標の保護と同じですね。今回は、品種登録について皆さんに知って頂きたいと思って、この記事を書きました。そして、品種登録に関する業務は、弁理士(特許事務所)に依頼できることも知って頂きたかったのです!
 美味しい(驚くほど美味しい!)ブドウは、スーパーで一房1000~2000円します。ハーゲンダッツアイスクリームが1つ300円程度、ショートケーキが1つ500~800円くらい。どれを選ぶか悩ましい。。。

Page 23 分からない書類

 役所に対して何かをお願いしようとしたとき、どのような手続をすればよいのか、必要とされる書面に何を記載すればよいのか理解が難しく、或いは、どのような制度があって何をしてくれるのかさえ、分からないことがあります。

 例えば、不動産を登記するとき、会社を設立するとき、健康保険を切り換えるとき、税金を払うとき等には、役所に出向いて多くの書面に記載し、記載を間違えたりすると何度も役所に行かなければならないこともあります。

 最近では、マイナンバーカードがあるので、住民票の発行や健康保険の切り換え等は楽になっていますが、マイナンバーカードの更新手続に関しては役所に出向く必要があり、まだ全く役所に行かなくてよい、という感じにはなっていないようです。

 事業を始めると、税金、労働保険、保険年金等について、色々な役所から多くの書類が届きます。何の書類だか分からないし、分かっても次は書き方が分からない、分からないから電話で尋ねる、となるのですが、電話が繋がらなかったり、繋がっても1時間程度は時間を浪費してしまう。。。まあ、税理士さんに質問すれば教えてもらえるし、対応してくれるのですが(笑)。

 特許や商標について特許庁に手続をする場合も、結局はこれらと同じことが起こります。特許出願や商標登録出願をしても、特許庁から多くの書類が届き、何のことだか分からない。出願人が御自身で特許庁に対して手続をしますと、ご自宅或いは職場が書類の山で埋もれてしまいます。しかしながら。対特許庁手続に関しては、手続を代わって行う代理人に依頼をしておけば、全ての書類や連絡は代理人に通知がされ、御本人には、代理人経由でのみ連絡が入ります。このため、代理人から、必要な処理の説明を受けることができ、書類の提出や保管等を全て任せてしまうことができます。それで、この特許庁に対する代理人というのが、弁理士なんです。

 特許や商標の取得を代行して行い、権利取得後は権利行使のお手伝いをする…それが弁理士、と考えると複雑でややこしい業務に見えますが、役所とのやり取りを御本人に代わって行う、という視点から考えますと、税理士さんと同じような業務です。なので、特許や商標について特許庁から届く書類や連絡で分からないことがあれば、弁理士(特許事務所)に気軽に尋ねられるとよいです。税理士さんや司法書士さんと同じように親切丁寧に教えてもらえます!

 特許庁に対して申請等を開始するときも分からないことが多いと思いますが、特許事務所に連絡頂ければ、分からないことはなくなります。知っている特許事務所がないようでしたら、TNKアジア国際特許事務所にお気軽にご相談ください。税理士さんよりも親切丁寧にご対応ができる、かもしれません(笑)

Page 22 ジェネリック医薬品

 特許権は永久に存続するものではなく、一定期間(特許出願から20年間)でのみ有効です。以前にお話ししたと思いますが、特許権というのは、新しい技術を開発して公開してくれた人に対して、その御礼として一定期間のみ独占的な実施を認めてあげる、というものです。このため、御礼の期間が過ぎて特許権が消滅すれば、誰でもが実施できる状態になります。

 特許権の存続期間は、基本的には出願から20年もありますので、電化製品や電子部品だと、製品寿命がそれよりも短くて、20年よりも前に特許権を消滅させる権利者も多くいます。特許権の維持には、特許庁に対して特許年金(維持費)を支払わなくてはならず、これは年々高くなります。製品の販売が終わり特許権が必要で無くなれば、年金を払ってまで維持する必要はないので、年金の支払がされず特許権が消滅することがあります。このように消滅すれば、出願から20年経過する前に誰でもその特許発明を実施できるようになりますが、もう販売しないので、他人に実施されたとしても差し支えない、ということですね。

 その反面、出願から20年では保護期間がとても足りないという製品もあります。医薬品などは、製品寿命が長く、また医薬品開発には多大な時間労力と費用を要します。御存知の通り医薬品は認可のために費やす期間も長いので、開発費を回収するための期間として足りない場合があります。このため、特許法上、医薬品等の場合には、特許権の存続期間が、出願から20年を超えて延長される場合があります。

 しかしながら、病気がある限り、新たに取って代わる薬が開発されなければ、出願から20年や25年を超えても、その医薬品はずっと使われ続けます。出願から20年経過後も多くのニーズがあることも多いです。でも、特許権の存続期間は、出願から20年~25年で必ず終了します。

 このため、特許権の存続期間の満了を待って、それまでの特許権者以外の他者により、それまで特許により販売できなかった医薬品が販売されることがあります。これがジェネリック医薬品です。後発の販売者は、それまでの特許権者のように当該医薬品に開発費を投じていないので、販売価格を安くして販売することができます。

 この状態を、特許権の消滅後は良い医薬品を安く国民に提供できて有益と考えるか、特許権者の保護が足りないと考えるかについては(不治の病を治す大発明の薬や、多大な開発費を投じた薬であっても特許権の存続期間は同じ)、どちらが正しいのか、判断はとても難しいです。皆さんは、どのように思われますか?

Page 21 何について特許を取れるのか?

 こんにちは!以前からずっと特許の話をしていますが、一体、何についてなら特許が取れるのか、という話はしていなかったように思います。いや、したかも?(笑)。特許法では、「発明」を特許付与の対象とするとしており、この「発明」は、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」としています。このような文言だと意味がよく分かりませんが、誤解をおそれず簡単に言えば、創作された技術が特許付与の対象になる、という感じです。

 とすると、何が「創作された技術」で、何が「創作された技術」でないか、という話になります。ここで、機械製品、化学材料、医薬品、電子機器、製品や機械の部品等であれば、深く考えなくても、「創作された技術」っぽいことが分かります。しかし、物の販売方法、治療方法、美味しい料理の作り方(レシピなど)になってくると、「創作された技術」かどうかが分からなくなってきます。

 例として言えば、ある人が、羽毛布団を多くの消費者に買ってもらえる販売戦略、を習得したとします。その戦略が、寒い時期の給料日の次の日に昼下がりに訪問販売する、だったとして、特許付与の対象にはなりません。これは「創作された技術」ではないからです。この例は、分かりやすいですね。

 次に、美味しい料理の作り方です。その内容が、唐揚げを作るとき、衣にする生地の中に薄力粉及び片栗粉に加えてチョコレートを入れる、だったとします。しかしながら、これも特許付与の対象にはなりません。「創作された技術」ではないらしいです。また、寿司のシャリをネタの半分の重量にすると美味しく食べられる、とかも「創作された技術」ではないみたいです。このあたりになると、なんか技術っぽい感じがするので、もしやと思ってしまいますが、特許付与の対象にはなりません。これに対して、餅のような生地で包んだ大福のようなアイスクリームの場合、冷凍しても堅くならず生地に柔らかさを保たせる生地製造方法が、特許付与の対象になります。「冷凍しても堅くならず生地に柔らかさを保たせる」点が技術なんですね。

 つまり、料理方法や料理自体、或いは、純粋な販売方法などは、特許付与の対象にならないです。一方、「冷凍しても堅くならず生地に柔らかさを保たせる生地製造方法」、「にぎり寿司製造装置」、「コンピュータープログラムを用いたチケット販売システム」等は、特許付与の対象になります。どこまでが駄目でどこからがOKかは、この例ではなんとなく分かる気もしますが、究極の境目の判断は、専門家でも難しいです。

 ということで、特許付与の対象にならないものも多くあるという話でしたが、特許付与の対象にならないが他人に真似をされたくない、というようなものは、最初から秘密にして公開しないのが得策であることが多いです。特許は独占権が得られる代わりに内容が公開され、特許期間が過ぎると誰でも使ってもいい状態になります。最初から秘密にしておいて特許を取らなければ永遠に他人に真似をされることはありません。その一方で、特許を取得した方が有益な場合は多くあります。

 特許を取得すべきか、取得しない方がよいのか、この判断は大事ですので、そのような場合、特許事務所に相談されることをお勧め致します。

Page 20 最近の特許侵害

 特許侵害は、プリンターであればプリンター関連特許について、プリンターの会社が特許権の権利を行使し、或いは、権利を行使される、ということが多いです。例えば、新製品を開発したときに、特許権を使って、同業他社による類似品の販売を止める、等です。
 しかしながら、最近では、全くの異業種会社から特許侵害だと訴訟を提起されることも増えてきています。有名なのは、自動車メーカーがIT関連の特許権を用いて侵害だと主張されるような案件です。
 これは、特許権者から見れば、特許取得による収益増加のチャンスが大きくなった、と言えます。一方、第三者からみれば、自社の事業に関係のない団体から特許権侵害だと言われる機会が増えてしまう、ということになります。特許権の存在意義からすると、このような特許侵害は当然に侵害として収益確保の手段となるべきですが、実際のところ、新製品の開発時に、自社製品で採用している全ての部品や機構について他者の特許権の有無を調べて侵害のおそれがあるかを判断するのは、膨大な時間と手間が掛かります。このため、シンプルな機構の製品を扱う企業は、特許調査が比較的し易いのですが、自動車メーカーのように、様々な技術を組み込んでいる製品を製造販売する企業は、特許調査の負担が大きいです。
 それで結局、純粋に特許権者の利益を現状通り今後も認めていくのか、今後の製品開発の技術多様化を考慮して多少は第三者に配慮した制度又はルールを作るべきか、の見極めをすることが課題になってきます。
 現在は、コンピューター関連技術はどのような電気製品にも使われていますし、電気製品ではなくても、コンピューター関連技術が搭載されることが多いです。このため、技術開発をする側からみても、電気機器メーカーであろうと、自動車メーカーであろうと、鉄鋼関連企業であろうと、IT企業であろうと、コンピューター関連の同じ技術を開発していることも多いです。
 このようにコンピューター関連技術、更には、IT関連技術の発達により、各社が使用する技術の集中化が生じています。これにより、1つの特許権が分野の違いを超えた多くの企業の活動に影響を与えますが、これを、有用な技術を効果的に保護できると解釈するか、過剰な保護だと考えるかは、判断が難しいところです。皆さんは、どのようにお考えになりますか?
 国内では、繁華街やイベント等、マスク着用以外はコロナ前とほぼ同じに戻っていますし、海外からの旅行者の受入も一部始まりました。いいことですね。来月は、少し楽しい感じの記事を書きたいと思っています。食に関する特許などです。例えば、おいしい料理を作ったり、独自の美味惣菜レシピを考えついても、これらについては特許を取れないのです。このようなことについて説明したいと思っています。

Page 20 他社の特許を調査する

 自社製品について特許権を取得すると、他者による当該自社製品の勝手な製造販売がされないようにすることができます。これは、特許権を活用する基本的な例です。そして、視点を変えると、新たな製品を販売するとき、当該製品に使用している技術について他社の特許権が存在していると、この特許権の存在により、新たな製品の製造販売が自社ではできなくなる可能性があるということなんです。

 では、どのように対策を採るかですが、新たな製品の販売前(量産前の企画段階が好ましいです)に、当該新たな製品についての他社の特許が存在していないかを調べておき、存在しなければ開発を進め、存在していれば計画を変更する、という検討をすることが賢明です。他社の特許が存在しなければ、後に製造販売を停止せよと言われることなく安心して業務を進められます。また、他社の特許が存在していれば、その特許に抵触しないように製品の技術を変更するとか、販売を中断するといった策を採ることで、不利益を最小に抑えることかできます。

 そうしますと、どのようにして他社の特許を調べるか、になります。これには2つの方向があります。1つは、御自身で特許庁の「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」にネットでアクセスして、そこのウェブページで、自社開発技術に関する特許を検索する方法です。この方法は、誰でも無料で手軽に行える、という長所があります。短所としては、検索でヒットした特許が、本当に自社開発技術に関するものかを判断しにくいこと、そもそも的確にヒットさせて適切に検索を行うことが難しい、という点があります。しかしながら、この御自身で行う方法により得られる、時間的及び費用面でのメリットは魅力的です。

 2つ目の方法は、特許事務所に依頼する方法です。特許事務所に依頼した場合も、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を使用することが多いですが、検索に必要なキーワードの選定か的確ですし、検索結果として挙げられた特許が自社開発技術に関係するかの判断が正確です。そして、なにより、特許事務所に任せてしまえば、調査のための時間を節約して楽ができます。しかしなが、最大の欠点は、事務所による調査は有料! ということです。約\30,000-100,000円の費用が必要です。

 なお、この「調査」というのは奥が深くて、正確にすればするほど、調査のためのシステムも「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」とは異なる専門性の高いものを使用することになり、調査時間が長くなり、そのための費用も高額になります。

 というわけで、新製品を開発の際には、自社製品に特許を取得して戦略を有利に進めるべきかの判断に加えて、或いはそれに先だって、新たな製品について他社の特許が存在していないかの調査をお勧め致します。

 今回は、調査のお話でした。コロナはなかなか終息しませんが、経済活動は以前に戻りつつあり、街中でも賑わいの復活を実感します。もうすぐ元に戻れるのかなと期待をし始めています。もうすぐですよね?

Page 19 ロシアと知的財産権

 特許権等の独占権を自己商品等に取得すると、他者による勝手な同一商品等の製造販売を防止できる、勝手に他者により製造販売されても損害賠償請求ができる、というお話をしてきましたが、特許権等による収益獲得方法は他にもあります。例えば、特許権等自体を他者に有償で売却する、特許等に基づく実施権(ライセンス)を他者に有償で許諾又は設定する、等です。特許権の対象となっている技術を使いたい他者がいて自分ではもう使わない、などの場合は、他者に特許権を売ってその代金を得ることで利益を大にすることが期待できます。実施権を許諾等する場合は、特許権は自分でそのまま保有したまま、他者に使わせてその代金、つまり実施料(ライセンス料)の支払を受けることで利益が得られます。このように、特許権等を取得すると、様々な利益獲得方法があります。特許権等を取得できた場合は、収益化に向けて複数の利用方法を検討されることをお勧め致します。

 それで、最近のロシア情勢なのですが、ロシア政府は「非友好国」の企業や個人などが保有する特許権について、ロシア政府が認めた場合には使用料(上記の実施料、ライセンス料)を支払わなくてよいとする決議を施行しました。非友好国には日本も含まれています。

 特許権は、事業を国際的に進めやすいように、世界の多くの国が条約を締結して、各国はお互いに保護を約束し合っています。このため、外国企業や外国人にも特許権による利益は保障され、例えば多国籍企業等は特許権を複数国で取得することにより各国で収益が得やすいようになっています。これにより国際的にみて経済活動の発展に繋がるわけです。しかしながら、ロシアでは非友好国は特許権による収益が見込めなくなるので、経済的に大きな混乱が予想されます。

 また、ロシア系の銀行はSWIFTコードが使えず、ロシア系の銀行を通した送金ができなくなっていますので、ロシアの企業や特許事務所との金銭のやり取り自体も大変になっています。

 このように最近の世界情勢の不安定さは、知的財産権にも大きく影響を及ぼしています。コロナ、地震、戦争と、大変な状況が続きますが、3月22日からは蔓防による営業自粛が解除され、町には華やかさが戻っています。これから春を迎えますし、少しずつでも楽しめることが増えることを期待しています。

Page 18 知的財産権の管理

 今までは、特許等の知的財産権を取得するための手段と、知的財産権をどのようにして活用するか、について説明してきました。特許等の知的財産権を取得するためには色々と手続が必要なのですが、取得後は永久に存続するかというと、そういうわけではないんです。特許権や意匠権、実用新案権が発生しましたら、権利を存続させるための年金を特許庁に毎年納付する必要があります。金額は安いのですが(存続期間が長くなるほど高くはなりますが)、無料で存続させてくれるわけではないのです。なお、商標権は5年分又は10年分を纏めて支払うことになっています。また、特許権、実用新案権、意匠権は、年金を払っていても、法定の存続期間が満了すれば消滅することになっています。

 この年金を毎年払っていれば特許権等は法定の存続期間までは存続可能なのですが、支払わなければ、特許権等は消滅します。逆に言えば、不要になれば、年金を支払わないことで消滅させることができます。このため、毎年年金の支払い時期に、特許件等を存続させるかどうかの判断をすることになります。なお、複数年分をまとめて一度に納付することもできます。これにより、今後の複数年において特許を活用することが確実な場合に、毎年年金を払う手続をする煩雑さを回避できます。

 このように特許権は、存続のために年金の支払いが必要ですが、年金支払の管理は、一般的には、特許権を取得するまでの特許出願を依頼した特許事務所が行います。なので、特許出願を特許事務所に依頼すれば、特許取得に加え、取得後の管理を任せることができ、更には、権利活用や権利行使時の対策検討なども、特許事務所の弁理士に相談できることになります。

 特許権の取得及び取得後の管理は、なかなかに複雑で面倒な作業ですが、特許事務所を利用すれば、これらの作業から解放されて、本来の事業に専念することができます。特許事務所は、いまだに聞き慣れない遠い存在かもしれませんが(笑)、これを機会に、ぜひ身近な存在として考えてもらえればと思います。特に小規模な特許事務所ほど親身になってくれると思います。

 Page 17 ユニクロのセルフレジ その後

 ユニクロは、設置しているセルフレジについて特許権侵害で訴訟を提起されていましたが、結局、特許権者との間で和解が成立しました。特許権者は侵害訴訟を取り下げ、ユニクロは無効審判等の対抗措置を取り下げる、ということです。この紛争はこれで終わりです。どのような条件で両者が和解に至ったかは公表しないそうなので、どちらに有利な条件で和解したのか、両者に利益がある円満解決だったのか、などは当事者以外の誰にも分かりません。これにより、ユニクロは、今後もセルフレジを使い続けられますが、両者納得の内容で事態が解決していることを願っています。あのセルフレジは便利で使っていて本当に楽しいですし、特許権者側にも、あのように便利な技術を開発されたことに対する素晴らしい見返りがあって欲しいです。

 それで、ユニクロですが、今や誰もが知るグローバルな大企業ですね。しかしながら、30年くらい前は、あまり知られていませんでした。とても安い服が買える、というので、一部の人が知っている、という感じでした。その当時、ユニクロで買い物をしたときに服を入れてくれる紙袋は、何も記載されていない無地のもので、「ユニクロ」の文字は記載されていませんでした。ですが、20数年前にフリース素材のアウターが大ヒットした時点では、紙袋にユニクロのロゴが入っていました。その後は、広告に有名タレントが起用され、現在では、ロジャー・フェデラーや錦織圭選手も、ユニクロのロゴ入りのウェアを着用しています。つまり、ユニクロは、そのブランド力を、この30年間で大きく向上させたわけです。

 ユニクロは、服のコストパフォーマンスが良く、シンプルなデザインで質が良い、着やすい、という印象が定着し、「ユニクロ」という名前自体に大きな価値が付随するに至っています。このブランド力は、大企業に限らず、街中のお店等でも非常に大切です。「**レストラン」のハンバーグが美味しい、「**レストラン」に行きたい、ここにも「**レストラン」の支店ができた、入ってみようか、となります。高級食パンは、「ニ○○ワ」と「の○み」のどちらが好みの味か、などの判断は名前に基づいて行われます。

 企業名、商品名に付随するブランド力は非常に重要で、我々も無意識にブランドに基づいて、買うか買わないか、どれを選ぶかを、判断しています。「名前」自体は無形のもので物理的に存在しているものではありませんが、購買に大きな影響力をもたらしています。技術やデザインもそうで、実は形がないアイデアなのですが、よい技術や綺麗なデザインも、買うか買わないかの判断基準になります。

 このように、名前(商標)、技術(特許)、デザイン(意匠)は価値があり、ビジネスを進めていくには、保護することが非常に重要です。形のない技術について取得された特許により、大企業と対等にビジネスを行うことも可能ですし、他者から自身のビジネスを守ることもできます。商標権や特許権で知的財産を守ることは身近に行われています。知的財産が、とても身近に存在していることに気付いて頂ければ嬉しいです。

 ところで、自分自身のブランド力も、非常に重要ですね。周りの人々からの自分に対する振る舞いは、周りの人々が、我々が持つ自分のブランド力に基づいて決めているのだと思います。周りの人から親切にされるか、大切にされるか、意地悪に扱われるか(笑)は、自分自身が持っている自分のブランド力が原因かもしれません。やはり、ブランドは大切にしたいです(笑)。

Page 16 海外市場

 日本の技術力は素晴らしくて、30年以上前から、部品、車、電気製品等の分野で輸出量を増やし、日本は経済的に大きく発展しました。さほど競争を意識しなくても、他国の物よりも日本製品が海外でよく売れていました。ところが、最近では、他国の猛追を受けて、以前ほど海外での日本製品の優位性(価格及び品質について)がなくなりました。このため、海外で今後の市場を確保維持することが本当に重要になっています。日本、という大きな話をしていますが、企業単位で考えても、他国ライバル企業が参入してくることにより、市場でのシェアが小さくなりやすいです。

 そこでどうするかですが、市場確保の1つの策として、知的財産権(特許権、商標権等)を取得しておくこと、を挙げることができます。日本国内では、知的財産権の取得による市場確保は当然に行われているのですが、海外に製品を売る場合でも、まずは、知的財産権を取得して、他社による製造販売を抑制し、他社による追随を許さないようにするのです。海外でよくあるのは、ある製品を販売したとき、他社は全く同じ製品を製造販売するのではなく、これを改良して更なる機能を付加した製品を販売してくることがあります。更に改良された良い製品を消費者が買いたくなる心理を狙うわけです。

 しかしながら、自社で販売している製品に適用されている基本構造に特許権を取得しておけば、他社が当該基本構造に更なる機能を付加して違う製品にしたとしても、基本構造が同じである限り、当該他社製品に特許を行使することができます。つまり、現状の製品だけではなく、他社が将来販売してくる製品に対しても、市場を与えないことが可能になります。

 海外で特許を取得するのは、国内で特許を取得するよりもコスト高及び手続が複雑というデメリットはありますが、市場を確保するためには必要で有効な手段です。また、海外で特許を取得するコスト及び手続は日々簡素化かつ低額化しています。検討する意味は十分にあります。国内で需要が伸び悩み、デフレが進むのであれば、海外で製品を買ってもらえるのは大きな強みで、円安が進行した場合を考えても、海外でも市場を確保しておくことは重要です。

 ところで、日本(企業)の国際競争力が弱くなっている、という指摘がされることが増えています。日本、企業といった視点で考えると、直接的に個人には関係がないように思えますが、実際のところ、人と人、例えば、ビジネスマンとビジネスマン、学生と学生、自営業と自営業、士業と士業、同士を見比べた場合、他国と日本では、どちらが優れているのでしょうか。日本ということでいいですよね?

Page 15 ブランド

 本当に唐突ですが(笑)、私達は一体何を購入しているのでしょうか? ある人は、ニットのセーターを買うとき、ユニクロで3,000円のセーターを購入します。別の人は、ルイヴィトンで70,000円のセーターを購入します。更に別の人は、ラルフローレンで30,000円のセーターを購入します。この人達は、なぜそれぞれに別の企業のセーターを購入するのでしょうか。例えば、秋物のセーターだったとします。秋物のセーターは、薄手の綿、ウール、又はカシミア等ですね。上記の3社では、いずれもカシミアのセーターを販売しているとします。そして、秋物のセーターはみな薄手で丸首の同様のデザインで、品質はそれぞれに高く、触った感触も3社変わりなくいい感じです。こうなってくると、購入選択の基準は、いずれの販売企業が好きか、という話になってきます。

 ある人はユニクロが好きで、別の人はルイヴィトンが好きで、更に別の人はラルフローレンが好きなわけです。では、会社の好みが別れる理由は何でしょうか。品質がしっかりしていてコストパフォーマンスがよいと考えてユニクロが好きになった人、フランスの上品なイメージを醸し出し、観る人にも高級感を与えるという理由でルイヴィトンが好きな人、シンプルで上質なセンスのよい米国発ということでラルフローレンが好きな人、様々です。

 それで、ここからなんです。なぜ上記の人達は、各社に異なるイメージを持つようになったのでしょうか。各人が同じ社のものを大量に購入して製品について体験や体感を実際にしたわけではないと思います。各人が勝手に想像して、各社のそれぞれのイメージを自分なりに作り上げているだけ(妄想?期待?)だと思うんです。それではなぜ、皆は各社のイメージを持っているんでしょうか。答えの一つとしては、各社が自身のイメージを、広告や販売戦略等によって作り上げていることが考えられます。ルイヴィトンは、セーターに70,000円払ってもらえる自社イメージを獲得し、ラルフローレンはセーターに30,000円払ってもらえる自社イメージを獲得し、ユニクロはセーターに3,000円払ってもらえる自社イメージを定着させているのです。上述したように売値が安いからといってセーターの品質は劣りません。ユニクロのセーターは高品質です(低価格な分だけ購入動機を増やすことができます)。

 つまり、私達は、自分が勝手に持っている各企業のイメージにお金を払っていて、それでいいと納得してセーターを購入しているんです。このように企業イメージや商品イメージに対して消費者にお金を払ってもらえることが「ブランド」や「ブランド力」です。全く知らない企業名がセーターに付されていると1,000円でも買わないのに、同じセーターに「ルイヴィトン」と付されていると70,000円で買う人がいる(かもしれない)、ということです。それだけ、企業のブランド価値が高いということです。

 このように、「ユニクロ」「ルイヴィトン」「ラルフローレン」という名称に大変に高価な価値があることが分かります。だから、高級ブランド企業の偽商品が出回るわけです。売れるので。各社が相当な企業努力をしてブランド価値を獲得したのに、他人が只乗りするわけですね。

 ここで、商標権の出番です。販売する商品についてその商品名に商標権を取得しておけば、ブランド価値を獲得した商品名や、これからブランド価値を獲得するかもしれない商品名を、他者に使われないようにして自身で独占使用できます。頑張ってせっかく自社製品を売れるようにしたのに、同じような商品名で他社に販売されてしまって売上がもっていかれる、という事態を防止できます。

 というわけで、私達は、自分で勝手に想像したイメージにお金を払っているわけですね。世の中の全ての物やサービスに対して。この会社・人は有名だから高額を支払ってでも業務を依頼したい(得られる結果は同じなのに)、この航空会社よりもあの航空会社の方がいい(到着地も所要時間も同じなのに)、とかです。歌手やスポーツ選手だと話は異なりますが(笑)。

Page 14 知財ミックスで製品を保護

 こんにちは! 今回は、前回に引き続き、新製品開発時に効果的な知的財産法の利用を説明したいと思います。

 前回は、新製品を保護する方法として、特許権(又は実用新案権)、意匠権、そして、商標権があることを説明しました。これらのいずれか1つを選んで、新製品の技術的な構造、デザイン、又は商品名を、必要に応じて保護することは、他者による製品の無断販売を抑制する上で非常に効果的です。

 そして、今回説明したいのは、上記の特許権(又は実用新案権)、意匠権、及び商標権の全てを用いて新製品を保護する方法です。つまり、1つの製品について、新たに開発した採用技術を特許権により保護すると共に、見た目のデザインを別途意匠権で保護し、更に、当該新製品の商品名を他者に勝手に使われないように商標権で保護するのです。この方法は、「知財ミックス」と呼ばれています。ネーミングにセンスや捻りがありませんが(笑)、そのように呼ばれています。

 この方法は、理論上は非常に効果的です。新製品に採用した技術が市場で高評価を得ている場合には、その技術を他者には使われないようにして自社で独占できます。これにより、同じ技術が採用された商品が市場に出回らないようにできます。そして、この新製品のデザインが良くて販売数が多くなっている場合には、同様の技術が採用されているか否かに拘わらず、同じような外観の商品を他人が販売できないようにできます。また、この新製品が市場に認められていると、その商品名を手掛かりに消費者の皆さんは当該新製品を購入しますが、このときに、同じような商品名が他者により使用されていると、御社製品を購入しようとした消費者さんが、御社製品を購入せずに、間違えて当該他者製品を購入してしまうおそれがあります。このような場合に、同様の技術やデザインが製品に採用されているかに拘わらず、同じような商品名を使うことを他者にやめさせることができます。

 つまり、せっかく特許を取って技術を保護しても、その製品の外観だけを真似て同じ製品に見せかけた売り方をされると、採用されている技術が違うために、御社製品と勘違いをして消費者さんが他者製品を購入してしまいますが、意匠権により、そのような事態を防止することができます。また、採用されている技術やデザインは御社製品とは違うのに、商品名だけが真似られた他者製品が売り出されたとき、商標権に基づいて商品名の使用停止を求めることで、御社製品と勘違いされて購入されることを防ぐこともできます。

 このように、知財ミックスにより新製品の保護を図ることは有効です。しかしながら、複数の権利を取得する必要があるので、権利取得のための費用がその分高額になります。ここは欠点です。この欠点を回避するには、知財ミックスによる保護を狙うことを明確にして1つの事務所に相談することが重要です。一箇所で纏めて権利取得の作業をすることにより権利取得のための作業を効率よく行ってコストを低減させるのです。しかしながら、特許権、意匠権、及び商標権は、それぞれに専門性が求められるので、単にコストが安いだけでは不安です。

 このため、弊所では、知財ミックスによる効果を確保する専門性を提供しつつ、権利取得費用を低減できるチームを準備しています。最近は、知財ミックスが巷で取り上げられるようになりましたが、弊所ではこのチームで対応しています。何でもご相談ください!

 大谷選手のタイトル獲得、阪神の優勝も、まだまだ期待できる感じです。秋まではこれで楽しめますし、年明けは冬季オリンピックで楽しむことができますね。その頃には、コロナの状況も落ち着いているよう願っています!

Page 13 知的財産法で製品を保護

 こんにちは! 今回は、新製品開発時に効果的な知的財産法の利用を説明したいと思います。

 業務上、新製品を開発した場合、その製品の品質が良いほど、或いは、市場での評判が良いほど、他者に類似品を製造販売されるおそれが高まります。新製品の開発には多大な開発費が掛かっていますので、他者の模倣を野放しにせず、なんとか抑えておきたいものです。

 新製品を保護する知的財産法としては、まず、特許法があります。特許法は、まだ世の中に知られていない新規技術を保護の対象としています。このため、開発した製品に使っている技術が知られておらず新しい場合は、特許法による保護を受けることができます。特許出願をして特許権を取れば、他者による類似製品の製造や販売を止めさせることが可能になり、他者による販売等で損害が発生した場合は損害額を賠償してもらえます。特許法による保護対象は、技術(技術的思想)ですので、他者による類似製品の名前やデザインが自社製品と異なっていても、使われている技術が同様であれば、保護を受けることができます。

 なお、特許権は、特許庁の審査官による審査を通過しないと特許権が付与されず、保護を受けられないのですが、実用新案法による保護であれば、特許法による場合のような審査を経ることなく実用新案権が付与され、新規技術について保護を受けることができます。但し、無審査で付与される実用新案権であるがゆえに、後から権利無効が発覚したりと、権利行使ができないこともあります。特許による保護との使い分けが重要になります。

 次に新製品を保護する知的財産法として、意匠法があります。意匠法による保護対象は、物品のデザインです。新製品に新しいデザインを採用した場合に保護が受けられます。新製品のポイントがズバリ見た目である場合には、意匠法による保護は有効な手段です。たとえば、他者の類似製品のデザインが自社製品とよく似ている外観である場合には、審査を経て取得した意匠権を根拠に「そのデザインは止めてほしい」と言うことができます。意匠権により、他者による類似製品の製造や販売を止めさせることが可能になり、他者による販売等で損害が発生した場合は損害額を賠償してもらえます。

 更に、商標法による保護も受けることができます。上記では、特許法等による新規技術の保護、意匠法によるデザインの保護を説明しましたが、新製品を販売するときに使用している商品名については、商標法による保護が受けられます。つまり、審査により商標権を取得すれば、新製品と同じだったり似ているような名前を、他者が製品に使えないようにすることができます。新製品が特に新規技術を使っていなかったり、特徴のあるデザインではなかったとしても、同じような名前で同じような製品を他者が販売することを止めることができてしまいます。この場合も、販売の停止や損害賠償を請求できます。

 このように、新製品を販売される場合には、知的財産法による保護が受けられる場合がありますので、新製品を販売される際には、保護を受けることを検討されてはと思います。知的財産法により、ぜひ自社の新たな活動を他者から守られては、と思います。

 今度は東京パラリンピックが始まりました。大リーグの大谷選手や国内プロ野球の阪神も今年は面白くなっています。まだまだ暑いですが、楽しみは多くありますね!

Page 12 弁理士の仕事2

 こんにちは! 今回は、前回に引き続き、弁理士の仕事について具体的な内容を説明したいと思います。

 弁理士は、業務の1つとして、特許庁に特許出願をしますが、これに続く業務として、特許庁の審査官に対する応答があります。特許庁に対して特許出願と、これに加えて審査請求という手続をしますと、しばらくして、特許庁の審査官から審査結果が届きます。最近は、早期審査という請求をしますと、1~3ヶ月程度で審査結果が届きます。

 いくら良い内容の特許出願をしても、審査官から審査結果の通知が届いた後は、審査官とのやり取りがうまく行かなければ、特許権を付与してもらえませんで、審査官に対する応答は非常に大切なんです。

 ここで、審査官から審査結果が届く、というのは、審査の結果、発明の内容が不明確だったり、特許を求める発明に似た他の技術が見つかったりで、未だ特許にはできません、という書面が審査官から届く、という意味なのです。一方、審査において、発明の内容が明確で、特許を求める発明に似た他の技術も見つからない場合は、このような書面は届かず、特許付与を示す特許査定というものが届いて、審査官とのやり取りをすることなく特許を付与してもらえます。しかしながら、実は、このように特許出願後にすんなりと特許査定が届くことは余りありません。私の経験では、40件に1件くらいでしょうか。なので、ほぼ全ての特許出願に対して、一旦審査官から否定的な内容の書面が届きます。

 このため、特許出願をすると、必ずと言っていいほど、審査官から否定的な内容の書面が届くわけです。皆さんも、特許出願をする機会があり、審査官から否定的な内容の書面が届いても驚かないでください。これは当たり前のことなんです。

 そして、このように否定的な内容の書面が届いた後、審査官とのやり取りをして、特許を付与してもらえる方向にもっていく、という作業を弁理士が行うわけです。この書面に応答せず、そのまま放置しますと、特許を付与してもらえることはありませんが、適切な対応を採れば、特許を付与してもらえますので、この応答が非常に大切なのです。この作業は、弁理士の仕事ですが、特許出願人である依頼人との共同作業でもあります。発明の内容は、依頼人こそが知り尽くしているわけですので。そして、ここで覚えておいて頂きたいのは、この応答において、発明の内容を明確にして、特許を求める発明に似ている他の技術との違いを明確に説明できれば、特許にしてもらえることも多い、ということです。

 具体的なやり取りを説明したいところですが、今回はここまでにしておきます。前回の記事は説明しすぎて重かったように思いましたので。。。

 東京オリンピックが始まりましたね。数年前には、このようなオリンピックになるとは全く思っていませんでしたが、やっぱり選手達の活躍は清々しくて、応援が楽しいです!!

Page 11 弁理士の仕事1

 こんにちは! 今回は、弁理士の仕事について具体的な内容を説明したいと思います。

 弁理士の仕事は、その多くが特許庁に特許出願を行って依頼人のために特許権を取得する、或いは、特許庁に商標登録出願を行って依頼人のために商標権を取得する、という業務です。ここでは、特許出願を行って特許権を得る業務を説明します。

 まずは、特許権を取得したい依頼人から、特許出願をしたいという連絡を受けます。そして、特許出願をするために必要な作業、特許出願を特許庁に対して提出した後の作業の流れを、依頼人に説明します。特許出願をするために必要な作業は、特許を取得したい発明の内容を秘密状態に保ってもらうこと、当該発明の内容を示す資料を揃えてもらうこと、出願人を誰にするか、発明者は誰か、等を打ち合わせます。また、特許出願を特許庁に提出した後、それだけでは、特許権を得ることはできず、特許出願とは別に、審査請求という手続をして審査の開始をお願いすること、この審査を通らなければ特許権が得られないこと、審査官との間で様々なやり取りをしなければならないこと、特許が認められたときは年金を支払わなければ特許権が発生しないこと、等も説明します。

 このような説明が終わると、次は、特許出願をする発明の内容の聞き取りのために、依頼人と打ち合わせを行います。弁理士は、発明内容を把握しないと、特許出願についての各書類を作成できませんので…。この打ちあわせは、依頼人にとっても弁理士にとっても重要な作業です。発明内容を正確に把握しないといけないので、今回新たに開発した技術を示す書類や図面を用意して頂いたり、目的の効果を得るための構成や処理を細かく尋ねるのですが、これがなかなかに大変です。依頼を受ける技術内容も多種多様です。

 そして、発明内容の把握が終わると、同じような内容での特許出願が既に他人によりされていないか、正確には同じ内容の発明についての特許出願が既に公開されていないか、の確認を行います。いわゆる先行技術調査です。特許は、社会に知られていない発明にしか与えられませんので、既に公開されていたり、他人により特許が取られていますと、特許出願をする意味がないからです。この調査により、既に公開されている、他人により特許が取られている、といったことが判明しますと、今回ご提案の内容では特許出願はできないことを依頼人に報告することになります。

 そして、上記調査により、既に公開されていない、他人により特許が取られていない、といったことが判明した場合に、特許出願書類の作成に取り掛かることになります。把握した発明内容を書類に書き起こしていく作業です。技術分野、背景技術、解決課題、発明による効果、発明を実施するための形態などを文章で説明し、図による説明が分かりやすいことから、発明内容を示す図面も作成します。出願後の審査が通りやすいよう、将来特許権が得られたときの権利範囲を十分なものにするよう、多くのことを検討して作成します。まあ、ここが弁理士の腕の見せどころになります。しかしながら、この作業はとてつもなく根気のいる作業なんです。新しい技術は本当に難しいですし、今回の発明ポイントを的確に示さないといけないですし、従来技術との差を分かりやすく説明する必要もあります。

 特許出願書類の作成を終えると、依頼人との更なる打ち合わせです。作成した書類に記載した内容が依頼人の望み通りかどうかを確認し、希望通りに修正します。この作業は繊細な複雑な作業です。

 依頼人の考え通りの書類が完成し、依頼人から了承を頂いたら、特許庁に対して特許出願の手続をします。今はオンラインで手続をしますので、紙での郵送は行いません。

 特許出願の手続が終わりましたら、次は、審査請求という、特許庁に審査の開始をお願いする手続を、特許出願とは別に行います。この審査請求を普通にすると、審査請求手続から6ヶ月~1年くらいで、審査官による審査結果が届くのですが、審査をもっと早くに進めて欲しいという依頼人さんが多いので、更に、早期審査請求という手続もします。これは、今回出願した発明がなぜ特許になるべきか、みたいなことを説明する書類を作成して、審査官に審査を早く進めて貰うことをお願いする手続です。この手続により、審査官から審査結果か得られるのが、お願いしてから1~3ヶ月程度に早まります。この手続を終えますと、審査官からの連絡待ちの状態になります。

 特許出願を終えるまでの作業は、こんな感じですが、発明の内容を説明する、という作業は本当に根気のいる作業です。出願後に、特許権を得るために、特許付与を求める発明の内容を修正して、従来技術との差が更に明確になるようにしていくのですが、この修正は、出願当初に上記書類に記載した内容の範囲内でしかできません。このため、出願時に必要なことを全て書類に記載しておく必要があり、集中力が必要です。

 こんな感じで、特許出願を終えますが、この後は、しばらくすると、審査官から審査結果が届くわけです。最初に提出した記載内容のままで特許にしてもらえることは少ないので、ここから、特許権を取得するための次の段階の作業が始まります。

 次の作業はまた来月に説明したいと思います!弁理士の仕事を具体的に理解してもらえると大変嬉しいです。来月もぜひ読んで頂ければと思います。

Page 10 セルフレジと特許侵害訴訟

 こんにちは! 今回は、ユニクロのセルフレジについて、また話したいと思います。あっ、前回はPage6で話しました!

 ユニクロのセルフレジは、本当に便利で楽しく、あのセルフレジで精算をするためにユニクロに行きたい、と思うほどです(笑)。そして、皆様も御存知のように、ユニクロはこのセルフレジについて特許侵害で訴えられており、まだ結論は出そうにありません。

 現在、ユニクロは、セルフレジについて、大阪のアスタリスク社から特許侵害で訴えを受けています。そして、ユニクロは、対抗策として、この訴訟の元になっている特許の無効を主張して、特許無効審判を提起していました。特許が無効になるという意味は、その特許が最初から無かったことになる(遡及して消滅する)ということなんです(つまり特許法は、特許を消滅させる制度も採用しているんです!)。特許庁により特許が無効とされ、この特許が無かったということになれば、ユニクロは、「いやいや、この機械はこういう仕組みなんで、特許発明の要素を全て備えているわけではなくて…」といったやりとりとをするまでもなく、特許侵害の問題から解放されるわけです。このため、この無効審判の結論が確定するまで、特許侵害訴訟は結論を出せずに止まっています。

 今回の無効審判では、その結論がやっと出て、紆余曲折を経て結局、特許は有効として存続することになりそうです。なので、特許訴訟は結末に向けて進み出すことになりました。このまま、円滑に審理が進んで、ユニクロにはこのままセルフレジを採用し続けてもらい、アスタリスク社さんにもその対価として、お互いに納得する良い金額のライセンス料が入る、という結末になってくれれば…。ユニクロのセルフレジは素晴らしいし、特許権を有効活用するアスタリスク社も応援したいです。

 このようになれば良かったのですが、実際は、厳しいビジネスの世界、事情は複雑です。ユニクロは、この特許について別の無効審判も請求しているのです。実は、特許を無効にする証拠と理屈が異なれば、実質的には特許無効審判は何度もできます。そして、この2つ目の無効審判では、現在のところ、特許が無効になりそうな気配があるのです(未だ分かりませんが)。

 ということで、この特許紛争はまだまだ結論が見えないのです。2つ目の無効審判で特許無効とされても、これの取消を求める訴訟がされるでしょうし、また、2つ目の無効審判で特許が無効にならなくても、再開した訴訟の審理では、侵害だ、侵害じゃない、という話がまだ続くのかもしれませんし。

 今回も、消費者目線で(?)、色々と話してみました。ユニクロにとってもアスタリスク社にとっても双方が納得できる円満な解決が導き出されることを願っています! このように言うと、プロらしくないかもしれませんが。。。まあ、正直な気持ちです。

 コロナ、なかなか収まりませんねえ。もう2021年6月なんですけど。。。

Page 10 外国事務所との連携

 こんにちは! 今回も、外国で特許を取得する場合の話です。

 外国で特許を取るためには、特許を取りたいそれぞれの国で特許出願をして審査を受けて、特許付与を求める手続をすることが必要です。このため、各国で弁理士又は弁護士にその国での特許庁及び審査官とのやりとりをお願いしないといけません。このため、日本の各特許事務所は、諸外国の特許事務所や法律事務所とは、親密なお付き合いがあります。

 しかし、そうなると、どのようにして色々な国の弁理士や弁護士と親しくなるのか、という疑問が出てくると思います。答えは、1つ1つの事務所や一人一人の弁理士と知り合いになる、という至ってシンプルなものです。

 1つのパターンは、外国の弁理士が日本の各事務所に訪問に来る、というパターンです。日本は世界有数の特許出願大国で出願件数が多く(昔は世界一でした)、外国への出願件数も多いので、各国の弁理士又は弁護士、或いは営業スタッフ(?)が、日本の特許事務所に挨拶に来ます。このときに、日本の事務所側としては、外国出願を依頼できる事務所や弁理士を確保できる、というわけです。訪問してくるのは、国別にみると、米国、中国、韓国、インド、ドイツが多いですね。世界中の国から弁理士が訪問してくる、という訳ではないです。日本からの出願は、これらの国に対してのものが多いので、日本の事務所としては、これで事足りる場合もあります。

 個人的に面白いと思うことがあります。欧州の国で特許を取る必要があり、日本から欧州に出願するときは、欧州特許条約に沿った特許出願を欧州特許庁に提出することが多いのですが、その場合、欧州特許条約の加盟国であれば、どの国の弁理士(欧州特許弁理士)でも欧州特許庁に出願手続ができます。しかしながら、日本の事務所が依頼するのは、ドイツの事務所であることがかなり多いのです。欧州特許出願は英語でできますので、依頼先も英語圏の事務所の方が便利かと思いきや、なぜか皆ドイツの事務所に依頼しています。英国ではないんです。ドイツでも英語でやりとりできるからドイツで、というのは、スペインやフランス、ポーランドを選ばない理由ではないですよね。どの国でも、英語でのやりとりはできますので。色々な人に聞いてみましたが、本当の答えは分からないです。営業力、イメージ、日本との交流具合等、色々と考えられますが、国としてのブランドイメージって大切だなあ、と感じました。

 そして、2つ目のパターンは、各種の国際ミーティングや会議に出席して、そこで交流してネットワークを作る、というパターンです。こちらの話は、また次回にでもしたいと思います。

 欧州と聞けば一番先に思いつくのは、少なくともビジネスにおいては、ドイツなんでしょうね。旅行やスポーツだと、スペイン、イタリア、フランス、ウィンブルドン(英国)、ノルウェーの森(笑)、かもしれませんが。

 では、アジアといえば、外国の方々にとって、どの国が一番先に思い浮かぶのでしょうか?日本ということでよいのでしょうか?今ならやはり中国でしょうか。ビジネス戦略に長けたシンガポールかも?それとも、工業に加えて、エンターテイメント産業も好調な韓国でしょうか。国としてのブランドイメージって本当に大切だと思います。

Page 9 外国で特許を取るには?

 こんにちは! 今回は、外国で特許を取得する場合の話です。

 今までは、日本国内で特許を取る場合を前提にお話ししてきました。そして、日本で取得した特許権は、日本国内にのみ効力が及びます。米国などの諸外国では、日本で取得した特許権を行使することはできません。

 では、外国でも特許権を行使したい場合、つまり、外国でも自身の製品について他人による製造販売をさせず、自分だけで独占的に製造販売したい場合にはどうすればよいでしょうか。この場合は、特許権を行使したい国で特許権を取得すれば、その国で特許権を行使できる状態になります。例えば、ある企業さんが、新規に開発した製品を日本はもちろん、韓国やタイ、更に、米国でも製造販売したい、と考えているとします。この場合は、日本、韓国、タイ、及び米国の全ての国で特許権を取得すれば、各国で自社製品を独占的に製造販売できる状態を作れる、ということになります。

 一般には「世界特許」なるものがあるように思われがちです。1つの「世界特許」を取れば全世界で特許権を行使できる、みたいな。しかしながら、そのような「世界特許」は未だに存在しません。やはり、各国でそれぞれ特許権を取得しないと、その国で自社製品を独占的に製造販売できる状態にはならないのです。

 それでは、各国で特許を取るためにはどうすればいいか、ですが、これはシンプルに、それぞれの国で特許出願をして審査を受けて、特許付与を求める手続をする、ということになります。こうなると、国別に書類を作って、各国でそれぞれ特許事務所に頼んで、いや、そもそも、その国の事務所に連絡するなんて面倒、という話になってくると思います。このため、複数国で特許を取りたい場合は、日本の特許事務所に外国での特許取得のための手続を依頼すれば、各国での特許取得の手続を取り次いで管理をしてくれます。早い話、日本の特許事務所に依頼するだけで、諸外国での特許取得が何とかなる、というわけです。

 このため、弊所でも、諸外国の特許事務所や法律事務所とは、親密なお付き合いがあり、広くて深いネットワークがあります。どの国に対しても特許取得のための手続を円滑に行うことができるようになっています。「あの国で特許を取りたいなあ」と言えば、それだけで手配をすることができますよ!

 でも、そうなると、どのようにしてそんな色々な国の弁理士や弁護士と親しくなるのか、という疑問が出てくるかもしれません。このあたりの話や諸外国で特許を取るための実際の所内作業など、次回にお話ししたいと思います。というか、特許事務所の仕事を皆さんに知ってもらいたい、という気持ちが強いのですが(笑)。

Page 8 新製品に採用される次の技術を探れ!

 こんにちは! 今回は、企業が将来発表する技術や製品が事前にわかるかも、という話をしたいと思います。

 以前からお話していますように、新しい製品を開発した場合には、特許出願をして特許権を取得しておくと、他者が同様の製品を製造販売することを止めることが可能になります。なので、各企業は製品を開発したときには必ず特許出願をするわけです。と言っても、新たな車が開発されたからといってその車自体が特許出願されるわけではありません。車の場合だと、エンジンの一部の部品だったり、ディスプレイの表示制御だったり、或いは、施錠技術など、ありとあらゆる細かな技術について特許出願がされます。たった1つの製品に数百の特許出願がされることもあります。

 それで、ここでお伝えしたいことは、既に他人に知られている場合は特許が取れないため、特許出願は新製品や新規技術が他人に知られる前にされる、ということなんです。そして、特許出願は、出願日から1年6か月後に特許庁が公開公報により公表することになっています。新製品に採用される技術は、販売の何年も前に開発されて特許出願されていることも多いので、この特許庁の公開公報を調べることで、今後の各企業の技術開発動向がわかる、というわけです。

 このため、あるメーカーのスマートフォンに採用される次のディスプレイはどのような形式か、新車に採用される自動運転制御に採用されるのはこのセンサーか、この通信規格にはこの暗号化技術が採用されるのか、などを、公開公報に記載されている企業名や、発明の名称、出願時期、そして勿論、特許出願をなす明細書や図面から、予測可能なのです! この公開公報は、企業が他の企業の技術開発動向を調べたり、公報に開示されている技術を参考に更なる新規技術を開発するために用いたりすることが多いのですが、ネットで簡単に誰もが見られますので、興味本位で個人的に、新製品に搭載される規格やデバイスを予測して楽しむこともできます。

 このことから、最近では、公開公報を調べて、次世代のスマートフォンに採用される技術を知らせるネットニュースも多く見かけるようになりました。皆さんも、興味のある製品について、次の展開を調べてみてはどうでしょうか。暇つぶしにはなると思います…

Page 7 特許庁の審査

 こんにちは!今回は、特許庁のお話、特に、審査についてのお話をしたいと思います。

 特許を取得したい場合、特許を取りたい発明の内容を特許出願書類に記載して、この特許出願と更に審査請求書を特許庁に提出します。特許庁がこれらの書類を受け取ると、審査官が審査を始めます。ところが、この審査、十数年前までは、大変に時間が掛かっていたんです。上記の審査請求書により審査をお願いしてから一応の審査結果が得られるまで、数年かかっていました。当時は、日本の特許出願数は40万件を超えており、審査の手が足りていない状況で、審査に長期間を要するのが当たり前でしたので、審査が遅いという感覚はなかったように思います。

 しかしながら、審査が遅れるということは、特許出願した発明の特許化が遅れるということになります。企業が、製品開発から販売までを迅速に進めたいのに、特許が取得できるまで何年もかかっていたのでは、販売時に製品を特許で保護できない事態になりかねません。

 一方、他国では、日本よりも早く審査が進んでいる国もありました。例えば、米国は日本よりも審査が早かったです。そうすると、同じ発明を日本と米国に同時に出願した場合、米国では特許が取れて発明が保護されているのに、日本ではその発明は未だ保護が受けられていない、という事態が生じます。新規発明の保護について各国で差が出てしまいます。このため、審査期間を短縮する必要がありました。また、条約上の要請で、審査期間を早めなくてはならないという事情もありました。

 そこで、特許庁は、審査官の増員や審査に必要な調査の方法の改善等に取り組み(他にも多々改善されたと思いますが)、審査期間を短縮させました。今では、約6か月で審査結果が届きます。更には、早期審査という制度を利用すると、審査請求をしてから2か月程度で最初の審査結果が得られるようになりました。現在では、同じ発明を日本と他国に同時に出願したとき、日本での審査が最も早く進むようになりました(あくまで私の感覚ですが)。

 今では審査が早くなりましたので、特許出願から6ヶ月程度で特許取得に至る、ということも珍しくありません。特許制度は、製品開発から販売までを迅速に進める企業さんにとって、非常に使いやすいものになりました。また、個人事業主や小規模企業に対しては、審査請求料の減免措置を採っているため、審査に要する費用も以前よりも低額になっています。審査請求料は本来14~20万円ですが、減免措置により1/2,1/3となります。費用面でもかなり使いやすいものになりました。

 このように、特許制度は以前よりもユーザーフレンドリーなものになりました。事業で製品開発をされる際には、ためらわず特許取得を検討してみるのも一案です。

 なお、実務の体験上、日本の特許庁は、他国の特許庁に比べて、審査や手続面におけるサービスでかなり優れているように私は感じています。以前、日本は技術開発が盛んで企業からの特許出願件数が多かったため、特許業務に関しては世界をリードできていたからだと思います。他国の追い上げもありますが、日本の特許庁は他国の特許庁よりも優れた行政機関です。コロナ対応などで日本の行政に対する批判も出ていますが、この点に関しては安心してよいのではないでしょうか。あくまでも私見ではありますが…

Page 6 最近のセルフレジに驚いた!

 こんにちは!

 最近は、多くの店舗でセルフレジの導入が進められています。最も身近なところでは、コンビエンスストアでしょうか。このコンビニのセルフレジは、店員さんがするバーコード読取作業をお客さんが代わってするものですね。読取作業が終われば、クレジットカードか電子マネーで支払いを済ませます。慣れると結構気楽なので、あえてセルフレジを利用することも多いです。商品選びから支払いまで全て自分自身で完結できますので、こうなってくると、店員さんに毎回「ありがとうございました!」と言ってもらうのが心苦しく感じてきます。

 そんなセルフレジでも、今話題になっているのがユニクロのセルフレジです。ユニクロのセルフレジは、コンビニのようにバーコード読取をしなくてよく、買いたい商品を入れたカゴを、レジ台に作られた窪みに入れると、全ての商品の価格の合計が即座にディスプレイに表示される、というものなんです。コンビニの場合と違ってバーコード読取作業がないので本当にもう一瞬で会計が完了します。すごいことなのですが、服飾店で全てセルフ作業だと少し侘しい気もします(笑)。百貨店での買い物とは一線を画しています。

 そんな凄いセルフレジを採用するユニクロですが、実は、他者の特許権を侵害しているのではないか、と訴えられているのです。特許権者とユニクロとがお互いに持っている考えはそれぞれ複雑なのですが、要するに、ユニクロは特許権の存在を知っていたものの、この特許権を侵害していないと考えていて、特許権者は特許を侵害していると考えていて、紛争になっているわけです。

 それで、まあ私がここで説明したいことですが、それは、技術開発時に特許権を取得しておけば、たとえ相手が大手企業であっても特許発明を自由には使い難くなる、ということです。特許で押さえておいて、他の企業には製造販売させず特許権者自身で独占的に販売することも可能ですし、他の企業に使用させてライセンス料を徴収することも可能になります。特許庁に提出した書類だけで特許が取得でき、特許を取得しているだけで、有名企業でさえ、この特許を気にしながら業務を行わなければならなくなるのです。

 今回のユニクロの件ですと、特許権者は、ユニクロに使ってもらって、ライセンス料を貰うのが最も効率がいいですね。しかし、ユニクロも、侵害していないという考えを持っていますし、特許を無効にする審判も請求していますので、結末はどのようになるのかは分からないです。私の全くの個人的な意見としては、あのセルフレジはすごく好きなので、ユニクロにはこのまま採用し続けて頂き、特許権者にはその対価として、お互いに納得する良い金額のライセンス料が入るといいな、と思っています。もちろん、侵害していないとの結論になったり、侵害しているとの結論でユニクロがセルフレジ撤去、とかになったりするかもしれませんが。

 今回は、特許が活用されている事例として身近な話題に触れてみました!今年は本当に大変な年でしたが、しばらくは寒さを我慢して、良い春を迎えたいですね。春にはどうか綺麗な桜が見られますように!

Page 5 特許権を上手く使って製品販売

 こんにちは!

 特許による保護を得つつ販売を行うには、特許権を取得していることが大前提となります。そして、今までにお話ししましたように、特許権は、新しい技術に対してのみ付与されます。このため、特許により他者による同一製品の販売を抑制しながら新製品を販売したい場合には、新製品の販売前に、特許を取得しておくことが最も望ましいです。そうすれば、新製品の販売開始時点から、新製品に特許番号を表記して、他者による同一品の販売を牽制できます。

また、新製品の販売開始前(正確には公表前)に、なんとか特許出願さえしておけば、新製品の販売後であっても、特許を取得することはできます。この場合、販売開始後であって特許が取得できた時点以降は、他者による同一品の販売を牽制することが可能です。

 まあ、牽制だけでなく、損害賠償請求だったり、販売差し止め請求だったりと、色々とできるのですが、これらは、前回お話ししましたので、ここでは触れないようにしますね。

 従って、特許により他者による同一製品の販売を阻止したい場合は、新製品の開発段階から、特許出願を検討しておく必要があります。最低でも、新製品の販売前に特許出願はしておかなければなりません。簡単にいえば、特許事務所に相談しておいた方がよいです。

 なお、新製品の販売開始後であっても、販売開始から1年以内であれば、この期間内に特許出願をすることで、特許法の例外規定により、特許権の取得は可能です。基本的には、上記のように、新製品の販売開始前に特許出願をしなくてはならないのですが、実際には、新製品の販売前に特許出願をしておくことが難しい場合も多いため、このような取り扱いが認められています。特許出願は、実は面倒な作業で、新製品のどの部分について特許を取得したいかを特定し、特許を取得する部分を特定した上でその内容を書面で説明する必要があります。このため、特許出願をしようと決めてから、特許出願を完了できるまでには、平均1ヶ月程度の期間が必要です。しかしながら、実際には新製品の開発、製造、及び販売に奔走していて、じっくりと特許出願の作業のための時間を確保することなんてできない、ということが多いです。なので、新製品の販売開始から1年以内に特許出願をしているのならば、例外的に特許権を付与する、という規定がおかれています。

 まとめますと、特許権により他者の同一製品の販売を阻止しつつ新製品の販売を行うには、(1)販売前に特許取得、(2)無理なら販売前に特許出願だけはしておく、(3)それも無理なら新製品の販売開始から1年以内に特許出願をする、ということになります。

 というか、シンプルにいえば、新製品の販売を思いつかれたら、まずは、相談をしてみる、ということですね。特許事務所が最もよいですが、税理士さんでも、司法書士さん、弁護士さん、銀行員さん(?)など誰でもよいので、まずは相談をしてみてください。きっと弁理士につながりますので。ここで忘れないで欲しいのは、新製品の具体的な内容までは相談の段階では話さないようにすることです!特許が取れなくなりますので。新製品のために特許が取りたいけど…という程度の相談がいいですね。

 実は、他者による邪魔な販売を阻止しつつ製品の販売を行うには、特許権以外にも、意匠権や商標権を使うという方法もあります。これについては、またお話ししたいと思います。今回は、軽い話をと思っていましたが、あまり軽くないですね。失礼しました。次回こそ、軽くて面白い内容にしたいと思います!

 

Page 4 特許権をどのようにして活用するか 2

こんにちは!前回から、特許権を取得した製品を他人に無断で製造販売されてしまうことを、どのようにして防ぐかをお話ししています。

 特許権を取得しても、他人が特許製品の製造販売等を自主的に控えるとは限らないので、(1)特許権者が自分自身で自社製品が特許であることを積極的に広告する、(2)特許製品を無断で製造販売している他者に警告書を送る、ことにより他者による無断での特許製品の製造販売等を控えてさせる、といった策を説明してきました。

 これら(1)(2)により他者が製造や販売をやめてくれればよいのですが、これらを無視して、他者は、特許製品の製造販売をやめないこともあります。このような事態となった場合には、更に次の一手を打つことになります。

 このような次の一手としては、訴訟を提起する手段があります。他者が権利者に無断で特許発明を事業として実施することは違法行為なので、裁判所の力を借りて、他者による無断での特許製品の製造販売等をやめさせるのです。具体的には、裁判所に対する訴訟提起により、特許侵害品について差し止め請求を行います。そして、他者の侵害を認める判決が確定すれば、裁判所の力で、他者による無断での特許製品の製造販売等をやめさせてくれます。

 この訴訟による解決としては、更に、損害賠償の請求があります。上記の差し止め請求は、他者によるこれからの特許製品の製造販売等をやめさせるものなので、既にされてしまった侵害行為に対しては効果がありません。このため、既にされてしまった侵害行為により特許権者に損害が発生している場合には、その損害分を金銭的に支払ってもらうことを請求するのです。例えば、他者による特許製品の勝手な製造販売等のせいで、特許権者が販売する特許製品が売れなくなってしまい、本来は1000個売れるはずなのに500個しか売れなかったような場合は、この500個分を売り上げることで得られたはずの利益分を損害として侵害者に請求します。また、他者が勝手に販売した分について、ライセンス料を請求することもできたりします。裁判所による、このような損害賠償請求を認める判決が確定すると、侵害者である他者は、請求された金額を支払わなければならなくなります。

 これら差し止め請求及び損害賠償請求は、特許権を取得しているからこそ、できることです。特許権は、取得するだけで寝かせておくと効果が少ないですが、実際に動いている事業で販売している製品について取得しておくと、いざというときに有効に機能します。

 今回は、話の内容が固くなってしまいました。。。今後は、軽い気持ちで面白く読んで頂ける話を展開していきたいと思います。次回も読んで頂ければ嬉しいです。

Page 3 特許権をどのようにして活用するか

 こんにちは!前回は、特許権の内容や取得方法をお話ししました。今回は、特許権を取得した後はどのように活用すればよいのか、をお話ししたいと思います

 新たに開発した新製品について無事に特許権を取得できたとしても、特許庁に特許権の発生が登録されているだけでは、あまり意味がありません。特許権が発生すると、特許権の対象となっている製品等については、基本的に他人が勝手に製造及び販売することはできなくなるのですが、他人は特許権の存在を知らないことが多いのです。

 特許庁は「公報」を発行して国民全員にその特許権の内容を知らせるのですが、その公報は通常一般の方々の目にとまるものではありません。特許権の内容を知りたい人がウェブサイト等で調べて初めて知ることができるもので、一般家庭や企業に特許庁から自動的に公報が送られてくるようなものではないのです。このため、特許権を取得しても、他人が自ら、特許権の対象となっている製品等の製造や販売をやめてくれることは少ないです。

 ではどうするのか?ですが、まずは、特許権者が自分自身で特許権の内容、すなわち、自社製品が特許であることを積極的に発信する策があります。例えば、(1)製品自体やそのパッケージに特許番号等を記載し、製品を目にした他者に特許の存在を知らせるとか、(2)製品のカタログや販売ウェブサイトに特許を取得していることを明記しておく、といった方法があります。これらにより、他者が、「あっ、この製品には特許があるのか。では同じ製品や似た製品の製造販売を控えよう」という気持ちになることを期待します。これで控えてくれれば、かなりの効果です。特許権者は製品の販売を独占できます。

 しかしながら、他者が、特許の事実を知っても、その製品の製造や販売をやめない場合もあります。自分の製品は特許製品には該当しないと信じ込んでいる場合もあります。そのような場合には、次の策として、その他者に警告書を送る方法があります。「あなたの製造販売している製品は私の特許権を侵害するから直ちに製造や販売をやめてほしい」と伝えるわけです。これにより、他者の製造販売を牽制し、やめる方向に導いていくわけです。

 そうは言っても、警告書を送ってもその他者が製造や販売をやめない場合もあります。他者は、警告書をみても、自分は何も間違ったことはしていない、と考えることも多いですし、自分の製品は特許製品には該当しないと確信していることもあります。このような事態となった場合には、更に次の手を打つことになります。

 それで、次の一手なのですが、字数が多くなってきましたので、今回のお話はここまでとしましょう。次の一手は次回ということで。今は既に涼しくなっており、毎日眠りやすくなりましたし、食事も美味しくなってきました。皆さんに過ごしやすく快適な生活を楽しんでいただくためにも(?)、このお話はのんびり進めて行きたいと思っています。次回も読んで頂ければ嬉しいです!

Page 2 特許権とは?

 こんにちは!今回は特許権についてお話ししたいと思います。製造業等の方は、新たに開発した新製品を販売するときに、この新製品を他人に真似されたくない、自社だけで販売を独占したい、とお考えになると思います。このような場合に、新製品を他人が勝手に販売できないようにできるのが特許権です。例えば、製造業の方が、新製品を販売するとき、この新製品に特許を持っていれば、他人による同じ物の販売を止めたり、勝手に同じ物を販売された場合に賠償を請求できたりします。

 では、特許権は、どのようにすれば取得できるのでしょうか?特許権は、新技術の開発と共に勝手に発生するわけではありません。特許権は、特許庁という役所に特許出願(特許申請)をしなければ取得することができません。特許庁に特許出願をし、審査官による審査を経て、特許権が付与されます。この審査では、新しい技術(発明)について、新しさ(新規性)、難しさ(進歩性)、産業において利用できるか(産業上の利用性)の有無が判断されます。新しい技術にこれらがある場合に限り、特許が付与されます。

 ですので、特許を取得したい場合は、まず特許出願をすることが必要です。そして、特許出願には、審査官が上記の審査ができるように、新しい技術(発明)の内容を書きます。そして、特に注意が必要なのは、上記の「新しさ」は、他人に知られていないことを意味するので、基本的には新製品の販売前に特許出願をしておかなければならないことです。

 このような特許出願ですが、まともに審査をしてもらえるように新しい技術(発明)の内容を書くことは、なかなか大変です。このため、特許事務所は、発明者さんから依頼を受けて、特許出願書類を作成して、特許取得までの特許庁とのやりとりを行っています。特許事務所の存在意義の1つですね。

 このように、製造業等の方々にとって、新たに開発した新製品の販売時に特許を取得しておくことは、有効な手段です。今日では、企業間の競争で、スマートフォン、車、エアコン等のあらゆる製品には、無数の特許が取得されています。そして、技術開発の積み重ねにより、驚くべき高度な技術が登場しています。しかしながら、私は、いろいろな発明について特許取得のお手伝いをして高度な技術を見過ぎたせいか、今ではシンプルに、傘とか、靴とか、コーヒーとか、バタートーストとか(笑)、を最初に考え出した人こそ、本当にすごい人なのでは、と思っています。

Page 1 「知的財産権」と言われても…

 私は、特許事務所で弁理士として仕事をしているのですが、特許事務所や弁理士と言われても、何のことだか、わからないと思います。私自身、家族や友人、知人に、自分の仕事を説明しても、「う~ん…」と言われて話が続かなくなることが多いです。なので最近は、自分の仕事を説明すらしないこともあります。よく知られている職業である、税理士さんや弁護士さん、お医者さん、パイロットがうらやましいですね。

 そんな弁理士は、知的財産権というものを扱う仕事です。そして、知的財産権は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、等の形のないものについての権利ですが、一般的には、まだまだよく知られていないのが現状なんです。それで、この場を借りて(笑)、ちょっと紹介しようと思い立ちました!

 まずは特許権ですが、これは、新しい技術を考え出した場合に、この技術を他人が勝手に使えないようにしてくれる権利なんです。例えば、製造業の方が、新たに開発した新製品を販売するときに、この新製品に特許を持っていれば、他人に真似をされないようにしたり、勝手に同じ物を販売された場合に賠償を請求できたりします。逆に、悪気なく製品を販売していても、他人から特許製品と同一だから販売をやめて欲しいと言われるかもしれません。実は、この特許権などの取得をお手伝いしたり、揉め事を解決するのが私の仕事なのです。

 どうでしょう、ここまで退屈にならずに読んで頂けたでしょうか?(笑)。知的財産権は、事業者さんにとっては、「知っていると役立つ権利」だったり、「なかなか使える権利」だったりするのですが、経験上、長い話は聞いてもらえないことを知っていますので、この辺で!できれば、次回もまた、皆様に何かお話を聞いて頂けると嬉しいですね。